ウーバーが迫る「タクシー開国」 配車アプリ巡る覇権争いが激化(2018年3月5日)
ウーバーテクノロジーズ
米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズが日本のタクシー会社に急接近している。
配車アプリをタクシー会社に提供し、新たなモビリティーサービスのプラットフォーマーになろうとする。
もっとも、配車アプリに目を付けるのは、ウーバーに限らない。成長市場を巡る覇権争いが激しさを増している。
ダラ・コスロシャヒCEO
「郷に入れば、郷に従え。シリコンバレー流ではなく、日本の流儀に合わせてビジネスを展開したい」。スーツに慣れないネクタイを締め、穏やかな口調でこう語るのは、米ライドシェア(相乗り)最大手ウーバーテクノロジーズのダラ・コスロシャヒCEO(最高経営責任者)だ。
タクシー業界とけんかをする“暴れん坊”
タクシー業界とけんかをする“暴れん坊”──。ウーバーの創業者で前CEOのトラビス・カラニック氏は、歯に衣(きぬ)着せぬ挑発的な発言と行動で知られてきた。だが、機密情報の流出や、ドライバーに対する暴言問題などで2017年6月に退任。2017年8月に新CEOになったコスロシャヒ氏は、会社の行動規範を見直し、ウーバーを紳士的な会社にすべく、改革を急いでいる。
敵ではなく、パートナーになる
2018年2月下旬に来日したコスロシャヒ氏は、ライドシェアサービスを阻む“白タク規制”の緩和を強圧的に求める前CEOの路線を明確に否定。「対話を重ねながら、日本のタクシー会社に配車アプリを提供していく」との方針を強調した。安倍晋三首相に面会し、元駐日米大使のジョン・ルース氏とも対談。「日本のタクシー会社の良きパートナーになりたい」と繰り返した。
ウーバーの方針転換
ウーバーの方針転換にタクシー業界は揺さぶられる。以前のような争いも辞さない姿勢なら「ライドシェアとの共存なんてできない」(タクシー大手社長)と業界も一枚岩になれたが、配車アプリを通じて、タクシー業務の効率化やサービスの高度化を実現するという「現実解」を見せられては、固く門戸を閉ざしてばかりもいられない。
アプリを使った配車サービス
最初に動いたのは、買収を繰り返してグループで全国に約8500台ものタクシーを抱える大手、第一交通産業だ。ウーバーとの提携を協議しており、年内にもウーバーのアプリを使った配車サービスを始めることが見込まれる。
第一交通産業は中国の配車サービス最大手、滴滴出行とも業務提携している。米中の「巨人」と手を組むのは、訪日外国人客の需要が大きいとみるからだ。
潜在需要
ウーバーのコスロシャヒ氏は「すでに40万人が、日本でウーバーが使えないかを試そうとアプリを開いたことがある」と明かす。外国人にとって、使い慣れたウーバーや滴滴の配車アプリを介して日本でタクシーを呼ぶことができれば、訪日する際の利便性は大いに高まる。潜在需要は極めて大きい。
タクシードライバーにとっても、配車アプリ上に目的地が表示されれば、慣れない外国語に苦しむこともない。
もちろん配車アプリは何も外国人だけが利用するものではない。日本でも徐々に普及してきている。
全国タクシー
先行するのが、タクシー大手、日本交通の子会社であるJapanTaxiが、2011年に提供を始めた「全国タクシー」だ。5400台強の日本交通グループのタクシーに加え、今では47都道府県のタクシー会社の車両がアプリに対応。全国でこのアプリを使えるタクシーは6万台に達するという。
トヨタ自動車が75億円を出資
2月上旬には、トヨタ自動車がJapanTaxiに75億円を出資すると発表した。JapanTaxiは調達した資金を使いながら、配車効率の高いアプリや配車支援システムなどの開発を進める。「全国タクシーのアプリにはまだまだ改善余地が多い。トヨタからの出資で得た資金を生かして進化させたい」(日本交通の川鍋一朗会長)とする。
群雄割拠の配車アプリ市場
ウーバーや日本交通の視線の先には、目的地に利用客をより早く、より効率的に送り届ける、新しいモビリティーサービスがある。アプリで呼び出せるタクシー車両が増えるほど、利用客の利便性は高まるため、配車アプリを提供する企業はより多くのタクシー会社を仲間に引き込もうと躍起になる。
争奪戦は激化
争奪戦は激化する一方だ。2月20日にはソニーが、タクシー大手のグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ無線協同組合、日の丸交通と提携する方針を発表した。ソニーが犬型ロボット「aibo」で使ったようなAI(人工知能)技術も活用して、より効率よく配車できるアプリの開発を目指す。
タクベル
インターネットサービス大手のディー・エヌ・エー(DeNA)も神奈川県タクシー協会と組み、4月にも配車アプリ「タクベル」を使ったサービスを数千台規模で始める。「ウーバーと違って、タクシー業界の声にずっと耳を傾けてアプリを開発してきた。使い勝手で勝っている」とDeNAの守安功社長は自信を見せる。神奈川県を皮切りに、配車アプリサービスの全国展開を狙う。
無人タクシー
もっとも、単なる配車アプリの覇権争いで終わるとは限らない。自動車各社は自動運転車の開発を急いでおり、将来は運転手のいない「無人タクシー」が実用化する日が来るかもしれない。
EVでの配車サービス実験
実際、DeNAは3月5日から、日産自動車と組んでEV(電気自動車)の自動運転車両を使った配車サービスの実験を開始する。配車アプリと遠隔からの車両監視サービスを使って、自動運転のEVを配車して乗客を目的地まで運ぶ、新しいモビリティーサービスの実現を目指す。
白タク規制
全国で20万台超のタクシー車両が日々、走り回る日本。“白タク規制”を盾にライドシェアサービスの普及を阻んできたタクシー業界も、技術革新の波には逆らえない。配車アプリを核に自ら次代のモビリティーサービスのプラットフォーマー(基盤提供者)になるのか、それとも他社のプラットフォームに車両を提供する企業として成長を目指すのか。タクシー業界は今、大きな岐路に立っている。
2台目にスマホやiPhone、イー・アクセスなどが販売強化(2008年9月)
イー・アクセス子会社のイー・モバイル(Yahooモバイル)が、国内で最も薄くて軽いスマートフォン(スマホ)の新機種を投入する。アップルのiPhone(アイフォン)への対抗策だ。イー・アクセス以外にも、各社がパソコン並みの機能を持つ携帯電話(スマホ)の販売戦略を強化している。NTTドコモは2008年9月29日、北米などで人気の「ブラックベリー」シリーズの日本向け新型機種の投入を発表し、KDDIも2009年春、新たにスマートフォン市場に参入する。携帯電話市場がほぼ頭打ちになる中、各社は「2台目」向けに需要の掘り起こしを狙う。
壁紙やアプリが多彩
iPhoneなどのスマートフォン(スマホ)は、パソコンのようにキーボードを配列した機種が多く、長文メールの作成や、文書ファイルの編集などが手軽にできる。壁紙やアプリもも多彩だ。パソコン向けサイトの閲覧も可能。国内ではウィルコムが2005年末に発売し、ビジネス需要を中心に普及が進んでいる。
アイフォーン3G
ドコモが2008年9月29日に発表した新機種は、カナダのメーカーが世界で1900万台以上を販売している人気モデルの最上位機種。全地球測位システム(GPS)やカメラ、多くのビジネスアプリを備え、個人も手軽に楽しめる。ソフトバンクモバイルが2008年7月に発売した米アップル製「iPhone(アイフォーン)3G」の対抗機種として、2009年1~3月に発売する予定だ。
KDDIは法人向けに「E30HT」
一方、KDDIは2009年春、法人向けに「E30HT」を発売する。ビジネス文書を編集しやすいよう、文字や画像を鮮明に映す液晶画面を搭載する。
スマホでワンセグ
ウィルコム
イー・アクセス系のイー・モバイルは2008年10月、国内で最も薄くて軽い新機種を投入する。ウィルコムは2008年6月、スマートフォン(スマホ)で初めて、携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」が視聴できる機種を発売している。
パソコン代わり
各社がスマートフォンの販売に力を入れるのは、「パソコン代わり」に使える携帯電話の需要が増えているためだ。通常の携帯電話よりも文章を入力しやすく、メールやブログの更新などに便利なため、女性や若者の注目も集めている。
Apple
ドコモによると、国内の携帯電話の2007年度出荷台数に占めるスマートフォン(スマホ)の割合は、AppleのiPhoneを含めて2%と、北米(約17%)に比べてかなり低く、今後の成長が期待できるという。
ロアグループ
調査会社のロアグループ(東京)は、スマートフォン(スマホ)の日本での出荷台数は10年に600万台超と、2006年の10倍に達するとみている。
千本倖生(せんもと・さちお)会長
「携帯電話料金を5分の1にまで下げる」「10年後、音声通信は付加機能となり無料。大容量ネットワーク通信に特化する」--。ドコモ、au、ソフトバンクに続く「第4の勢力」として携帯電話事業に参入したイー・アクセス子会社のイー・モバイル社の千本倖生(せんもと・さちお)会長(65)は2008年7月、社会経済生産性本部の夏の軽井沢セミナーで、こうぶち上げた。
株式上場
彼の歩みを見ると、なかなかの馬力である。電電公社を飛び出して、第二電電設立に参画、その後、電話回線を使ったデジタル高速通信会社イー・アクセスの株式を上場させた。今回3度目の起業となる。
価格競争を仕掛ける
千本倖生氏いわく、「制度矛盾を抱える所に収益機会あり」。その心は、寡占などで超過利潤がある事業に参入し、価格競争を仕掛けるのがベンチャー成功のコツらしい。
ソフトバンクのADSL
1980年代に長距離通話料金は1分数百円したが、今は10円を切る。イー・アクセスやソフトバンクのADSLの登場などにより、インターネット回線の料金もこの10年弱で料金は5~6分の1まで下がった。その分、超過利潤があったのだという。
ビジネスモデル成功
もちろん、今回のビジネスモデルが成功する保証はない。アクが強く敵も多い。しかし、周辺に「ワクワク感」はあふれている。
モバイル・インターネットの記念の年
「2008年はモバイル・インターネットにとって記念の年になる」。数か月前に、外電が伝えた米インテル社首脳の言葉を思い出す。
革命前夜
新型CPU(中央演算処理装置)の発表時だったように記憶している。だから“話半分以下”に聞いていたのだが、何度目かのインターネット革命前夜なのだろうか。最近の動きは、何か起きるのではと思わせる。
iPhone3G
2008年夏、米アップルの新型携帯電話「iPhone(アイフォーン)3G」が話題を呼んでいる。高速・大容量のデータ通信ができ、「電話付きパソコン」との声もある。
実売価格は5万円前後
都心の家電量販店は、小型パソコン売り場がにぎわっている。海外メーカーの参入で実売価格は5万円前後まで下がった。機能をネット接続などに絞っているが、持ち運び用の第2パソコンとしてなら不自由はない。
ライブドアや村上ファンド事件
翻って、日本全体の起業意欲はどうか。ライブドアや村上ファンド事件の余波か、統計上の起業社数は減少傾向が続いている。日本能率協会によると、今の新入社員は、専門知識や技術力の習得より、マナーを学びたいという。社員旅行や社内運動会を歓迎する空気も強まっている。
65歳の冒険
起業家と新入社員の比較には無理があるし、調和型や順応型社会人を目指すのも悪くはない。しかし、千本倖生会長の65歳の冒険を横目に、日本の将来を思う時、少し寂しい。
「自動車も、繊維と同じ道をたどるのでしょうか」
経団連会館の会長応接室で、豊田章一郎会長(トヨタ自動車会長)は聞いた。昨年八月のことだ。繊維産業審議会会長として訪問した前田勝之助・東レ会長は、即座に答えた。
「その通りです」
40年で成熟
成長期を過ぎた成熟産業として、繊維は自動車の二十年ほど先を行く、といわれる。新素材、医薬品への多角化によって衰退を防いだ東レ会長とのやりとりは、豊田氏が「自動車の次」を真剣に考えていることを示していた。
日本の自動車市場は、大衆化の始まりから四十年足らずで成熟し、国内販売は頭打ちだ。目を世界に転じても、増えるとすれば現地生産しかない。繊維、造船、鉄鋼、電機……。日本で基幹産業と呼ばれた業種は、急成長、貿易摩擦、中進国の台頭と同じ展開をたどり、変化に適応できない企業は衰えた。トヨタが手がける新事業は、この危機感に基づいている。
「企業には寿命がある」が持論の奥田碩社長はまず、分社化を念頭に住宅部門の強化に乗り出した。一九七五年、車の設計技術を生かそうと参入したが、二十年以上も赤字が続いていたためだ。九六年春、太陽熱温水器の朝日ソーラーと販売会社を設立、この九月には中堅の住宅会社(東証二部上場)を傘下に収めた。
トリプルA
二十一世紀序盤の花形産業と目される情報通信の分野でも、移動体通信のIDO、長距離電話のテレウェイ、国際電話のIDCの筆頭株主として、世界規模での再編に備えている。
非自動車分野への進出を支えるのは、「トヨタ銀行」とも言われる資金力だ。手持ち資金は今年三月末で約二兆五千億円。これに対し、社債などの有利子負債は四千億円弱、金融機関からの借金はない。異業種への出資は、新事業に布石を打ちつつ、余裕資金を有効活用することでもある。
米国の格付け会社ムーディーズは、世界の自動車会社で唯一、トヨタの社債に最高のトリプルAをつける。「財務力、国内シェア、変化への適応力」を評価したものだ。高い格付けは、さらに有利な資金調達に道を開く。
「きんと雲」
「脱・自動車」を念頭に置きながらも、乗り物へのこだわりは小さくない。
「海」では、今年四月に高級モーターボートを発売、マリーナや付属施設の経営にも乗り出す。その先には、創業者の豊田喜一郎が夢見た「空」がある。
豊田英二名誉会長は戦前の三六年、喜一郎の指示で航空機の研究を始めた。敗戦で途絶えたが、「理想は、思いのままに動く孫悟空のきんと雲」という英二氏の思いは変わらない。九一年にはエアロ事業企画室が発足し、技術陣は高級車「セルシオ」のエンジンを軽飛行機に転用、実際に飛ばせてみせた。
トヨタグループ発祥の地、名古屋市西区の豊田紡織工場跡に九四年、グループの歴史を紹介する産業技術記念館が開館した。ここには、戦前にトヨタがつくった木製プロペラもある。(構造化知識研究所)
入り口ホール真ん中には、喜一郎の父、佐吉が考案した織機が展示されている。実は開館の二年前、ホールの天井が、六トンの重量物をつり下げられるよう設計変更された。トヨタの発展を見下ろす高さ十五メートルの吹き抜け。それは「いつか飛行機を飾るため」(斎藤謹吾館長)の空間である。
米ネット広告2005年は好調 100億ドル突破へ
2005年10月
米国の2005年のインターネット広告費が100億-120億ドル(約1兆1400億-約1兆3700億円)と、初めて100億ドルの大台を突破する見通しになった。業界団体である「双方向広告事務局」(IAB)と会計事務所「プライスウォーターハウスクーパーズ」が共同で調査した。
今回の調査結果によると、2005年1月-6月のネット広告費は2004年1月-6月期比で約25・8%増の58億ドル(約6600億円)。通年ではこの調子でいけば、過去最高額に達すると予測している。
新聞、テレビ、雑誌といった主要メディアのほとんどがネット部門に力を入れ、動画の配信といったさまざまなサービスを充実させていることが要因となっている。IABが調査を開始した1996年は通年で2億6700万ドル(約300億円)だった。
日本でもネット広告費は急増している。電通が発表した2004年の日本国内の総広告費は2003年比3・0%増の5兆8571億円。4年ぶりに増加に転じた。このうち、インターネット広告費は1814億円で2003年比53・3%増と大幅な伸びを記録。総額で初めてラジオを上回った。
IABは、ウォルト・ディズニーやニューヨーク・タイムズ紙、フォーブス誌のネット部門や、マイクロソフト社のサイトMSN、ヤフーなどが加盟する組織。